東京最古といわれる靖国神社能楽堂を舞台とし、満開の夜桜の下、今年24回目となる奉納夜桜能が開催されました。私たち、ちよだの声は3日間開催される中日である4月5日の夜の演目を楽しませて頂きました。
野外の能舞台の周囲にかがり火を焚いて能楽の演目を演じることを「薪能」(たきぎのう)というそうです。春の宵に次第に暮れゆく闇の中、かがり火に浮かび上がる桜の花と、能面をつけて舞う役者、囃子方、謡があいまって幽玄、夢幻と呼ばれる世界感をつくりあげていました。
かがり火をともす「火入式」に始まり、「舞囃子」「狂言」「能」の3部構成で舞囃子に”経政”、狂言は”佐渡狐”、そして能の演目は”一角仙人”でした。
人間国宝である梅若玄祥、野村萬をはじめ当代一流の演者達が集う素晴らしいものでした。
今、千代田区では伝統や歴史を持つ建築物や土地がだんだんと姿を消しつつあります。それは千代田区の政策の形としてそうなってしまっているのですが、こうして実際に120年以上の歴史を持つ能楽堂を体感し、そこで息づく世界無形遺産、演劇として「世界最古」といわれる日本独自の舞台芸術を目の当たりにすると、やはりこうしたものを保存し、国内外に広めつつ、そして次の世代に手渡していくことが私たちが担うべき役目であると実感するのでありました。
さくらまつりや、御霊祭りで区民にもなじみ深い靖国神社ではありますが、夜間は普段閉ざされている神門の扉の先にはこのような優美幽玄な世界が広がっていたことは今回私たちも初めて知り、感動しました。
来年も同様にこうした企画があると思いますので、皆様も体験されることをお薦め致します。